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『マイナス・ゼロ』を読んだぞ

先日からたびたび触れておりますように、広瀬正『マイナス・ゼロ』を再読中でしたが、昨日の非常勤先の補講からの帰りに完読しました。

いやあ~実に面白かった。初読のときの記憶がないから初読同然だったこともありますが、これは筋を記憶していて再読しても面白かったと思うな(色々伏線の確認をしたくなるからね)。

一応、SFなんですが(タイムマシンが出てくるので当たり前なのですが)、それ以上にタイムトラベル先の戦前の風俗に関する記述が面白かったですし、極端な話、そこだけでも読む価値はあります。「SFはどうもね」という人にもお勧め。

タイムトラベル物には付き物のタイムパラドックスも実にうまく処理されています。これについては、主人公の涙ぐましい努力もあるのですが・・・(あまり書くとネタバレになるからなあ~。未読の愛妻にも内緒)。

タイムパラドックスの処理のうまさで、この種の小説の価値のほとんどが決まってしまうと考えるボクにとって、『マイナス・ゼロ』はタイムトラベル物の最高峰に位置付けられます。

とにかく、タイムマシンの存在以外はすべて論理的でなければなりませんが(むしろ、タイムトラベル物ではない作品よりも論理性やリアリティは厳しく追究されるべきだとボクは思います)、この作品は矛盾のない堅牢で美しい構造を持っています。

さらに広い意味で叙述ミステリ的要素もありますし、暗号解読物の要素もあります。

後者については、現在とは異なる未来の言語(文字も文法も異なる)を解読するシーンがあるのですが、未来の記数法が十進法ではなく十二進法であることを主人公が解明するくだりなど、極めて論理的ですし、ワクワクするものがあります。

と言うことで手放しで賞賛してしまうぞ。今回、キンドルの日替わりセールの対象になり、たぶん多くの人の目に触れることになったであろうことは大変喜ばしいのであります。
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今年一番面白かった本

今年もいろいろ本を読んだけど、一番面白かったのはコレかなあ。

---ここから過去記事再掲---

邦訳の発売早々名著という評判の『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳、河出書房新社)を買いました。

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ご覧の通り紙版の上・下と、キンドル版(上下合本版)ぜ~んぶ買ってしまったぜ。最初に紙の方を買って読み始めたら面白かったので、キンドル版もダウンロードして、いつでも読める状態にしたんだ。

キンドル版はボクで、紙版は愛妻というわけではなくて、ぜ~んぶボクが気分で読み分けるんだYo!文庫がもし出たらそっちも買うYo!

ついでに原書も買ってしまおうかな(ちなみに、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』はハードカバー、文庫、キンドル全部買ったし原書も買った(汗))。


---再掲ここまで---

貨幣について書かれた第10章をはじめとして、経済学徒にも楽しめる内容だと思います。ボクはワクワクしながら読んだよ。

読後感が爽やかな青春小説であるなあ

隙間時間だけを使って貫井徳郎『明日の空』(創元推理文庫)のキンドル版を読了しました。

本当に隙間時間(例えば歩いていて信号待ちとか)に読んだのですが、あっと言う間の242ページ(文庫換算)でした。以下、敏感な読者にはネタばれになるような(ネタばらしはしていないつもりだけど)ことを書きますので注意してね。

創元推理文庫に入っておりますので、広い意味でのミステリなのですが、しかし、これはもう読後感の爽やかな青春小説でありますねえ。結末は悲しいのですが、でも爽やかなのです。

映像化が不可能なレベルの叙述ミステリに分類される作品であり、ボクはPart2の語り手の「おれ」を全然違う人物だと思っていました(実は、もっと大きなミスリードがありますし、完全に一本背負いを食らいました)。

とにかく、叙述ミステリとして秀逸な作品である(とても技が決まってる)と思いますが、青春小説としても十分楽しめる作品です。それに、軽く読める(読むのは軽くても、書く方は難しいと思うよ)。愛妻にも薦めたいけど、こういうときはキンドル版は困るね(彼女はキンドルを使わない)。

アマゾンの読者レビューの中にある、caritas77氏の「謎が解けたときに、それが好意や愛情に基づく謎の振舞いである場合には、さわやかです。」というご意見はまさに同感だなあ~。

と言うわけで、久々に万人にお勧めしたい小説なのであります。

ピンクの本と言えばやはりコレだ!

昨日はピンクの表紙の盛山和夫『社会調査法入門』(有斐閣、2004年)を紹介しましたが、「ピンクの本と言えばやはりコレだ!」と言うわけで、過去記事再掲です。

---ここから過去記事再掲---

DPLはピンク色が大好きですが,なぜ自分がピンク色が好きなのかあまり深く考えたことはありませんでした(「好きなものは好きなのだ!何か不都合ありますか?」という気持ち).でも,最近,一寸だけ自分がピンク好きの理由を考えてみようと,下の写真の本に手を出しました.

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野村順一著,中村充写真「ピンクの秘密」(文藝春秋,2008年)です.著者の野村氏は,商品色彩学専攻の商学博士.なお,商学に商品学という分野があって,旧高商系の経済学部・商学部などで開講している(していた)ことはDPLも知っていましたが,商品色彩学とは不勉強ながらDPLは初めて聞きました.

それは兎も角,著者は,「ピンクが好きな人の人物像」は,「『愛したい!愛されたい!ヒトの世話をしたい』愛にあふれた人」(p.9)と書きます.「愛したい!愛されたい!」,これについては,当たっています(但し,DPLの場合は,愛の対象は愛妻限定ですけど.それに,「愛したい!愛されたい!」のはピンク好きでなくても誰でもそうじゃないのかな?).しかし,「ヒトの世話をしたい」はハズレだなあ.

それから,「ピンクは無邪気の色,女性そのものの色」(同頁)とも書いておられますが,DPLは邪気の塊だし,ピンクを「女性そのもの色」と言われても男子のDPLは困ってしまいますね(DPLは,フェミニンを装っているつもりはまったくないし…).

著者は既に故人になっておられ,本書は遺稿等をもとに編集されておりますので,記述に体系性はありませんが,中村氏の美しい写真を楽しみつつ,興味のある部分を拾い読みしていくのが,本書のベストな読み方ではないかなと思います.DPL的には,「色の中で,若返りに強烈な効力を発揮するのは唯一ピンクです.ピンクは大脳を刺激して,若返りのホルモンを活発にさせます」(p.16)という記述に目をひかれました.ピンク色の装いの人は男女を問わず若く見えるのは確かですね(素人考えでは,大脳生理学的理由よりも,単に「見え方」の問題のような気もするけど…).

色彩に関する心理学や生理学にDPLは疎いので,記述の科学性についてDPLは論評する資格を持ちません.色彩占いのような記述もあり,この点,少々気にならないこともないのですが,目くじら立てずに楽しめば良い本だと思います.しかし,結局,「なぜDPLはピンク色好きなのか?」の答えはわかりませんでした.

ついでに,様々なピンクアイテムを紹介した実にプリティな本を紹介しましょう.下の写真の本です.

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その名も,「ピンク大好き!Pink!Pink!」(トーソー出版,2008年)であります.実に460点ものピンクアイテムが美しい写真と共に勢揃いしています.まさに欲しい物だらけですが,DPLが既に持っているものが載っていたりして,一寸嬉しくなりました.「へぇ~こんなものもあるんだ!!!」と一々驚嘆の声をあげながら,本書を読みました(眺めました).ピンク道は奥が深い.ピンク好きの人は,直ちに本書を入手し,座右に常備するべきです.

さて,今日の記事のカテゴリーですが,「読書案内・本を巡る随想」に入れるべきか,「ピンク大好き!」に入れるべきか,迷いましたが,結局,後者にしました.


---再掲ここまで---

再掲に際して、文字カラーを変えたのですが、ピンクはピンクでも目がチカチカするピンクを選んでしまったのは失敗だった。それにしても、この記事、定期的に再掲しているような気がするけど、まあいいや。なお、今回の記事カテゴリは「青年の書評」です。

じわじわ楽しい統計学の教科書だ

経済学者の荒戸寛樹氏のツイッターで知った藪友良『入門実践する統計学』(東洋経済新報社、2012年)、なかなかの良書です。

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荒戸氏は同じくツイッターで「来年のゼミ輪読候補」と呟いておられますが、ボクもそうしようかな。

この教科書、とにかくコラムが多いのが特徴です。全部で38もあるYo!(ボクの好きなダン・アリエリーの『予想通りに不合理』やレヴィット&ダブナーの『ヤバい経済学』からの引用もあります)。そして、それがまたいずれも面白い。愛妻との食卓会話ネタにも使えそう。

本文も、説明が物凄く丁寧で、しかも読んで楽しい。事例も盛り沢山。しかし、統計学教科書のポイントはキチンと押さえています。と言うわけで、ボクは手放しで賞賛してしまいます。

付録の「実証研究の手引」では、先行研究の調べ方やアイデアの見つけ方まで書かれているYo!素晴らしい!

ボクは前任校では農学系の学生相手に統計学を教えていたんだけど(今は全然違う科目を教えていますが(汗))、その頃この本があったら迷わず教科書に指定していたと思うよ。

沖縄の軽便鉄道についての素敵な本

土曜日は、某所で戦前の沖縄の鉄道に関連した発表をしてきました。

と言うわけで(もないのですが)、戦前の沖縄の鉄道についてのお勧めの本を今日は紹介しましょう。

福岡の出版社である海鳥社から2009年に出た、松崎洋作・絵、ゆたかはじめ・文の『沖縄軽便鉄道』です。

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終戦とともに消えた沖縄県営鉄道の在りし日の姿を、独特の明るいタッチのイラストと読み易い文章で再現した素敵な絵本のような本です。

随所で、遺構等の写真入り解説もあり、鉄道史的興味から本書を手にされた人にも有益です(ただ、本書刊行後に消滅してしまった遺構も残念ながらあります)。歴史学者の金城功氏による「沖縄県鉄道概史」も巻末に付いています。

考証が行き届いたイラストですが、童話の世界のようなファンタジックな趣があり、ボクは大好きです。愛妻と一緒に鑑賞するのも楽しい。何度見ても飽きません。

もちろん、イラストに描かれた平和な世界は、戦争によって失われてしまうわけですが・・・。

以前、ボクは「最終的には蔵書は小さな棚一つ分ぐらいを残したい」と書きましたが、この本は、その棚に入れたい一冊です。

なお、沖縄の鉄道史については、加田芳英『図説 沖縄の鉄道』(ボーダーインク、1986年、改訂版2003年)が一番のお勧めです。

八木牧夫『五街道ウォークのすすめ』

ずいぶん前に、タイトルに魅かれて購入していた電子書籍です。

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ダウンロードしたことを忘れていたのですが、最近、キンドルの中のアイテム一覧を見ていて、思い出し、読み始めました(小さい書物ですので直ちに読了)。

著者は、『ちゃんと歩ける中山道六十九次』「ちゃんと歩ける東海道五十三次』(いずれも、山と渓谷社)などの街道歩きのための詳細な地図を作成されたことで知られています。

本書は、タイトルの通り、五街道(東海道、中山道、甲州道中、日光道中、奥州道中)を歩くためのガイドブックなのですが、構成が少々変わっています。

もともと、著者は、不摂生な生活から生活習慣病のオンパレード状態になり、「運動」の大切さに目覚め、健康のためにウォーキングを始められたそうです。そして、そのフィールドが五街道でした。そのためか、五街道入門というよりもウォーキング入門としての色彩が強く、32%のところで、ようやく五街道の話になります。

最初読んでいて、なかなか五街道の話が出て来ないので、「本の選択を間違えたかなあ~」と思ってしまいました。

要するに、ウォーキング入門的な話が主で、五街道の話は従(ウォーキングのフィールドの一つの例)という印象を与えるような構成になっています(あくまでもワタクシの感想)。

とは言え、本書の三分の一ぐらいのところでようやく登場する五街道についての歴史的な説明も、よくまとまっていると思います。また、いつくかの脇街道への言及もあり、読んで面白いと思います。

それにしても、ウォーキング入門のところの記述は力が入っています。非常に具体的かつ実践的で、正しい歩き方、シューズの選び方はもちろん、服装や小物についても微に入り細に入り非常に具体的に言及されています。また、雨対策、疾病対策、安全対策などへの注意喚起も忘れていません。

本書の通りに準備をすれば、超長距離歩行を伴う五街道ウォークで失敗するリスクを軽減できると思います(その意味で非常に実践的な本です)。もちろん、実際のウォークでは、先に挙げました著者による詳細な地図の携行を忘れてはいけません。

ワタクシ自身は、せいぜい、一日10~20km程度しか歩きませんし、良い季節限定(もちろん、炎天下や雨天下では歩かない)のヘタレ街道歩行者ですので、正直言いますと、著者の言うような装備の必要性を感じて来ませんでした。

さらに、「少しでも危険が伴うような峠道は歩かない」と言うこともあります(学生時代は道なき道を歩いたりもしたけど、今は愛妻を心配させるわけにはいきません)。

ワタクシが、「これから街道歩きを始めよう」と思って本書を読んだとするならば、「街道歩きは面倒臭そうだな」と尻込みしてしまったかも知れません。実際、「全線踏破はボクには無理だなあ~。これからもつまみ食いだ」と思ってしまいました。

とは言え、これから街道歩きに正しくチャレンジされる人には、かなり役立つ本であることは間違いありません。特に、各街道の全線踏破を狙っている人は、素直に著者のアドバイスに従うべきでしょう。

世の中には説明の凄く上手な人がいるものだ

角川書店がキンドル本のセールをしておりましたので、瀬山士郎『読む数学』(角川ソフィア文庫)を買ってみました(紙の本の63%引きだったYo!)。

瀬山氏の本は初めて買いましたが、数学の啓蒙書を沢山書いておられる数学者です。分かりやすさでは定評がありますね。

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ボクも軽~い気持ちで読み始めたのですが、これが分かりやすい上に面白い。結構ハマってしまいました。こんな本を小中学生の時に読んでいたら、もっと算数や数学が好きになっただろうなあ~。愛妻にも勧めておこう。

ただ、「読む数学」をうたっている割には数式の展開がそれなりにありますので(決して多くはないけど)、「文章だけ」と思って読み始めた数式アレルギーの人は注意が必要です。でも、数式が入ることによって分かりやすくなっている場合が殆どですから、安心してね。

瀬山氏は、もともと群馬大学教育学部の先生でした(今は退官されているようです)。瀬山先生のお弟子さんに、数学や算数を教わる生徒さんは幸せだろうなあ~と感じた次第であります。

ちなみに、瀬山先生、ホームページも開設されていますよ。

http://homepage2.nifty.com/seyama/

必見です!

谷汲線には行けなかったけど

名古屋鉄道谷汲線(2001年廃止)の終点・谷汲駅が、ほぼ現役時代のまま保存されておりますので、ず~っと「行きたい」と思っていたのですが、ついに「この週末にでも思い切って行くか」と決意したのです。

しかし、土曜日は全国的に悪天候で、あえなく断念。まあ、悪天候の中で廃線跡を歩いても楽しくありませんし、愛妻に心配をかけるだけだから、そのうち出直します。

と言うわけで、予習のために古書店から取り寄せた、大島一朗『谷汲線:その歴史とレール』(岐阜新聞社、2005年)を、書斎でときどき眺めて過ごしました(他にもやることがありましたので、書斎仕事に切り替えたのですが、諦め切れずにと言うわけ)。

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ちなみに、大島氏は、産業考古学の世界では、レール研究の第一人者として有名な研究者です。

本書は、谷汲線の歴史が過不足なく纏められており、谷汲線跡探訪の予習にうってつけなのですが、圧巻は、第2章のレールの悉皆調査の報告部分です。

レールの調査と一口に申しましても、大島氏は、延べ22km、約2200本(!)のレールの「ロールマーク」を1本ずつ調べられたと言うのですから、頭が下がります(本当に凄い!)。一つの路線のレールをここまで徹底的に調べた例は無いと思います。

そのようなわけで、レール研究の奥深さを垣間見ることができるという点でも、本書は大変貴重なものです。谷汲線には行けなかったけど、本書に出会えたのは収穫でした。

これは良書です!

最近、電子書籍ばかり買っているので、久しぶりに紙の本を買ってみました(と言っても1週間ぶりぐらいか)。

アレックス・カー『ニッポン景観論』(集英社新書ヴィジュアル版)であります。

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これ、いつもの衝動買いではなく、これが欲しくて書店に行ったのであります(Amazonで注文しようとしたら、「一時的に在庫切れ」だったんだもん。あれ!いま見たら「11点在庫あり」になっているYo!)。

書評サイトの「HONZ」で出口治明氏(ライフネット生命保険CEO兼代表取締役会長)が紹介されているのを読んで、どうしても読んでみたくなったのでありました。
http://honz.jp/articles/-/40900

出口氏の書評が的確に内容紹介をされていますので、要約は省略しますが、期待を裏切らない良書であります。地域開発論を学ぶウチのゼミ生にも強く勧めておこう(もちろん、愛妻にも貸してあげよう)。しかし、社会を動かす地位にある人にこそ読んで貰いたいなあ。

噂の本を買ったぞ

「お前はもう死んでいる」など、各章の副題が、「ぶっ飛んでいる」ことで、一時期(今もか)、たいへん話題になった本です。

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「各章の副題が面白いぐらいでは、買わないぞ」と心に決めていたのですが、やっぱり、買ってしまった・・・。あの副題を見れば、愛妻も読みたくなるんじゃないかなあ?まあ、別に愛妻に読ませようと思って買ったわけではありませんが。

とにかく、本書は法律学者による(!)計量経済学の入門書です(計量経済学の教科書では普通扱わないテキストマイニングのようなトピックも入っていますが)。

「法律家はもっと科学的思考が必要だ。法律家は統計学ぐらい勉強しろよ」とワタクシ、昔からず~っと思ってきたのですが、まさか、法律学者の手によってこのような入門書が書かれるとは!

各章の副題は、「ぶっ飛んでいる」けど、中味はちゃんと書かれています(当たり前ですが)。トピックスの選び方も考え抜かれていますね。読み物としても面白いと思います。

「これから、社会科学の実証分析を勉強しよう」という人には、良い手引きとなるでしょう(本格的勉強には、これだけでは不十分ですが、ちゃんと文献ガイドが付いています)。

ところで、この本、某書店の「法哲学・法制史」のコーナーにあったんですが、それでいいんでしょうかね・・・。

今野浩『ヒラノ教授の線形計画法物語』

岩波書店から2014年3月に出た「ヒラノ教授シリーズ」の最新作(たぶん)です。大学の生協書籍部でたまたま見つけて購入。

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今まで読んだ「ヒラノ教授シリーズ」、どれも「たちまち読了」の面白さでしたので、「ハズレなし」と判断して中味を見ないで買いました。

オペレーションズリサーチ(OR)に特に関心がない「一般読者」には、「少しテーマが地味かな?」と思いましたが(もちろん、ORの世界では中核になる方法ですし、その意味では決して地味ではありませんが)、普通に楽しく読めそうな内容でした。今野氏の筆力は流石です。

もちろん、線形経済学が流行した時代を経験した世代の経済学者も、楽しめるのではないでしょうか?(ワタクシはもっと若い世代だYo!でも、DOSSOの『線型計画と経済分析』は原書も邦訳も持ってるYo!)。もっとも、今では、経済学専攻の研究者や院生で、線形計画法に関心を持つ人は少ないかも知れません。

でも、あの小宮隆太郎氏が、経済学部の助教授時代に線形計画法の講義をして、それを工学部生の今野氏が受講したくだりなんて、経済学徒には面白いと思うよ。

ちなみに、ワタクシの専攻する農業経済学の世界では、農業経営計画や地域農業計画で、今でも線形計画法やそのバリエーションが盛んに使われていますので、ワタクシ自身は非常に興味深く読ませていただきました。

農学部の学生時代に、単体法を一所懸命、手計算でフォローしながら勉強して、「うまいこと考える人がいるなあ~」と感心した記憶も蘇りました。

この単体法の発明者であるダンツィク教授(今野氏のスタンフォードでの師匠でもあります)についての記述が当然ながら多く、クープマンス教授とカントロビッチ教授に、線形計画法の分野でノーベル経済学賞が授与されながら、最大の功労者であるダンツィク教授に授与されなかった件など、読んでいてワタクシの方が悔しくなってしまったのであります。

カーマーカー特許裁判についても詳しく、「新奇性が無い数学公式」が特許になってしまったこの事件について、今回改めて事実を確認して、読んでいて無暗に腹を立ててしまったり(もちろん、カーマーカーやAT&Tベル研究所に対して)、なかなか興奮(?)しながら本書を読みました。

まあ、一言でいえば「面白い!」本でありました。また、愛妻へのお勧め本リストに加えておきましょう(最近、お勧めし過ぎかな?)。

そう言えば、昔、『経済セミナー』誌上で、塩沢由典氏がダンツィク教授の『線型計画法とその周辺』(小山昭雄訳)についての好意的書評を書いておられて、それを見て早速、同書を購入した記憶が蘇りました(この本の原書については、ヒラノ教授は「バイブル」と表現しておられます)。

実は、ダンツィク教授のこの本、まだ読了していなかったんだった。これを機会に再挑戦しようかな。

クリスティー『春にして君を離れ』

先日、ミステリを話題にしましたが、その記事に対してコメントを寄せていただいた訪問者の方が、アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』に言及されていました。

未読でしたので、早速、早川書房から出ている電子版(中村妙子訳)をダウンロードしました。もともと文庫で300ページを少し超えるくらいの長さですし、訳も自然な日本語ですので、ほぼ即日読了。

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良妻賢母を自任する独善的な中年女性が、旅先で足止めを食らい、有り余る時間の中で過去を反芻し、今まで見ないようにしてきた真実に思い至って愕然とする・・・という心の動きが主な内容です(こう書いてしまうと味わいが削がれるなあ。現物はもっと面白いよ)。

もちろん、このままでは終わりませんが、未読の方の興をそいでもいけませんので、これ以上は書きません。

上記のワタクシの中途半端な要約からも想像できますように、狭義のミステリではありません(と言って「広義」のミステリでもないか)。

しかし、最後の1行での、主人公の夫の独白には痺れました。大ドンデン返しとまでは言いませんが、この最後の1行のためにあるような小説です。さすがクリスティーだなあ。

愛妻の感想も聞いてみたい。

佐藤信『推計学のすすめ』との再会

「ついに講談社のブルーバックスKindle版がぞくぞくと出始めてる!」というhoskw先生のツイートに誘われて、名著の誉れ高い佐藤信『推計学のすすめ:決定と計画の科学』をダウンロードしてしまいました。

もちろん、紙バージョンは持っており、昔読みました。農学系の学部に所属していた前任校時代は、学生にも薦めました(そう言えば、著者の佐藤信氏は農芸化学の分野の人ですね)。恥ずかしながら統計学の教師でしたしね。

書斎の片隅に眠っているはずですが、発掘するのが面倒なので(最近、ちょうど読み返したいと思っていた)、試しにKindle版を購入したという次第。

お値段は紙版と同じ903円。「出版社により設定された価格です」だそうですが、この価格設定何とかならないものか・・・。それに、可変レイアウトではなくて、紙の物をスキャンしただけ(活字も汚い)。自炊レベルの品質。

iPod touchやiPhoneでは事実上読めません(まったく読めないことはないが、一々拡大する必要あり)。「この品質でこの値段はないだろう」というのが正直な感想であります。

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まあ、しかし、内容は素晴らしい。天下り式の数式は一切使わずに、統計的仮説検定の考え方が脳に染みわたるように工夫されています。このあたりの芸は、教育で給料をいただいている身としては見習わないといけないなあ。

ときどき、統計学ユーザーの間で「理屈よりも実践」という姿勢が目立ち(統計学の学習で実践から入るのも悪くはありませんが程度問題)、「理解しないまま統計パッケージを機械的に使っているのでは?」と疑わせるような研究報告に接することがありますが、そういう人に本書を薦めたいのであります。

ただ、まだ持っていない方には、Kindle版の品質が悪いので、紙バージョンの購入をお勧めします。新書だから軽いしね。それにしても、本書の出版は1968年です(!)。この間絶え間なく版を重ねているところが本書の実力を示していますね。

ところで、上の写真は同書をiPadで開いて、Nexus7の内蔵カメラで撮影しました。Nexus7の内蔵カメラの初仕事です。カメラの性能は今一つかなあ?まだ人物写真を撮影していないので、今度愛妻を撮ってみよう(研究用だからもちろん試し撮り)。

『銀行仕置人』は半沢直樹じゃないか

最近、池井戸潤氏の小説にハマっています。この数日間で何冊か読みましたが、以下の『銀行仕置人』(双葉文庫)もその一冊です。

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要約する代わりに、アマゾンの商品紹介を引用します。

メガバンクに巣食う悪党どもに鉄槌を…巧妙な罠に嵌り黒部一石は出世街道から、真っ逆さまに落ちた。重役、部長、支店長みんな叩き潰せ!″平成の岩窟王”の至難の復讐劇が始まった。池井戸潤の金融長編ミステリー第8弾。最高の痛快作!! (引用ここまで)

この商品紹介、実に面白そうですが、実際、ノンストップの面白さです。しかし、この小説の主人公・黒部一石(関東シティ銀行本店営業第三部次長)って、ほとんど半沢直樹ではないですか!(性格も行動パタンも)。黒部と同期の西川研(企画部次長)なんて、渡真利忍そのものだし。

しかも、双葉文庫版の183ページで、黒部一石は「手段を選ばない。やられたら、やり返す」なんて言ってますよ!

ワタクシは「黒部に半沢直樹の原型を見た!」と思ったのですが、実はこの作品、『オレたちバブル入行組』(2004年)と『オレたち花のバブル組(2008年)の間の2005年に出ているのでありました。残念ながら(?)黒部は半沢の後の登場です。

なんだか、「「半沢直樹」という名前は、たまたま「半沢直樹」であって、名前はどうでも良かったのかな?」と思いましたが、どうなんでしょう?世が世ならば(?)、ドラマのタイトルは『黒部一石』だったかも・・・。

まあ、面白ければ良いです。しかし、タイトルに「仕置人」の文字が入っているように、やはり半沢物でも時代劇を意識しているのでしょうか?(「『半沢直樹』の面白さは、時代劇的なところにある」とは多くの人が指摘するところです)。

とにかくスカッとする作品でありまして、愛妻に薦める一冊です。

池井戸潤『最終退行』

TBSの人気ドラマ『半沢直樹』がとうとう最終回を迎えてしまいました(多分、皆が予想するように何らかの形で続編があるとは思うけど)。

テレビが無いので最終回は見られませんでしたが、聞くところによれば、ほぼ原作通りの結末(大和田常務に一矢報いますが、しかし半沢は子会社出向)だったようですね。

それは良いのですが、先日、出張先から愛妻の待つハート庵に戻る新幹線の車中で、『半沢』の原作者の池井戸潤氏の『最終退行』(小学館文庫)を読みました。

やはり銀行を舞台にしており、上司や上層部の不正を暴くという『半沢直樹』に通じるストーリーを軸に、東京湾に沈む旧日本軍の財宝を探すという話も絡んで、冒険小説やピカレスクの趣もある作品となっています。

主人公は、中小企業が集積する地域の銀行支店の副支店長ですが、半沢と同じように、上司の失敗の責任をとらされて出向させられそうになります。状況だけでなく、人物そのものが半沢を彷彿させる感じです(物語の出だしはそうでも無かったけど、途中からだんだんと半沢化)。

ワタクシは脳内で、堺雅人さんにこの副支店長を演じさせてみましたが、違和感がありませんでした。要するに、途中で半沢物を読んでいるような気になってしまったYo!

ただ、この主人公の奥さんが典型的な悪妻であるところが、半沢と違うところでした(『半沢』の原作はテレビのような良妻ではないらしいけど。でも『ロスジェネの逆襲』には半沢花は出てこないな)。しかも、最後にこの悪妻がらみで、どんでん返しもあります(ちょっと胸のすくような)。

それにしても、池井戸氏の作品を読むと、「銀行ってそんなに大変なところなのか!」と思いますが、本当のところどうなんでしょう?世間知らずの経済学部教授(笑)としては、とても気になります。

いずれにせよ、「さっき東京を出たのにもう新大阪か。あれ?名古屋止まったっけ?」という言葉で、この作品に対するワタクシの評価に代えたいと思います。

中島義道『私の嫌いな10の言葉』を読む

ワタクシは哲学者・中島義道氏のファンです。と言っても、氏の著書は『哲学の教科書』(講談社学術文庫)しか読んだことがないので、ファンを名乗る「資格」はないかも知れません。

そんなワタクシが中島義道氏の『私の嫌いな10の言葉』(新潮文庫)を手にとりました(と言っても、kindle版をダウンロードしたのですが)。

取り上げられている言葉は、「相手の気持ちを考えろよ!」「ひとりで生きているんじゃないからな!」「おまえのためを思って言ってるんだぞ!」「もっと素直になれよ!」「一度頭を下げれば済むことじゃないか!」「謝れよ!」「弁解するな!」「胸に手をあててよく考えてみろ!」「みんなが厭な気分になるじゃないか!」「自分の好きなことがかならず何かあるはずだ!」です。

ワタクシも、これらの言葉のほとんどに蕁麻疹が出そうになります。それで、「これは!」と大いに期待して読み始めました。

そして、一気に読了しましたが、期待通り、あるいはそれ以上の展開でした。ワタクシには異論はありません。とにかく、「よくぞ書いてくれた」というのが率直な感想です。皆さんも読んで欲しい(愛妻にも是非薦めたい)。とにかく、偏屈者の繰り言ではなく、立派な文化論です。

ところで、特に印象に残った箇所が、哲学者にして人気エッセイスト・土屋賢二氏について述べた「おかしくない「おかしい話」はどきどきする」という箇所。中島氏は、土屋氏の「おかしいはず」の文章がぜんぜん可笑しくないとおっしゃいます。

実はワタクシも、土屋氏の文章が苦手でしたので、「自分の感性は大丈夫だろうか?」と不安に思っていたのですが、中島氏が同じような疑念を呈されていましたので(中島氏は「自分でも感受性が狂っているのではないかと気が滅入るほどおかしくないのであって、土屋さんになぜか聞きたいくらいです」と書かれています)、何となくホッとしました。

土屋氏の「おかしいはず」の話の例として、中島氏は以下の文章を引用されています(土屋著『われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う』(文春文庫)の帯にある土屋氏のことば)。

「本書の読み方は簡単である。暗号で書いてあるわけではないから、普通の日本語として読んでいただきたい。ページは若い順に読んでいき、行は右から左に、文字は上から下に読んでいただければよい。なお、この読み方が理解できない人はどういう動機で本書を買ったかを、今後の参考のためにご一報いただければ幸いである。」

この文章に対して、中島氏は「どうしよう。全然おかしくない」と途方に暮れるわけですが、この途方に暮れ具合がワタクシには妙に可笑しく、電車の中で読んでいたので笑いを堪えるのに苦労しました(土屋氏の文章よりよほど可笑しい。中島氏は真面目に書いておられるので申し訳ないのですが)。

土屋氏の文章に対する評価一つとっても、ワタクシは中島氏の感性が正しいと思うのですが、いかがでしょう?

道尾修介『球体の蛇』は切ないなあ

最近、隙間時間に小説を読むのが癖になってしまいました(以前は、啓蒙書中心だったのに)。

そのようなわけで、浦賀和宏氏のキンドル版になっている作品を全部読んだ後(と言っても5冊だけだけど)、次に手を出したのが道尾修介『球体の蛇』(キンドル版)であります。

ミステリ仕立ての恋愛小説と言ってよいのでしょうか?相次ぐどんでん返しも含めて連城三紀彦氏の作風を連想させます。

ただ、最初の方では、江戸川乱歩の『人間椅子』や『屋根裏の散歩者』を彷彿させるようなシーンがあり、「あれ?こんな作品なの?」と思いましたが、その後の展開は、乱歩には無い、重く切ない恋物語という感じでありました。

複数の可能性が提示されて、真相は明らかにされないまま終わりますが、それはそれで深い余韻が残り、ワタクシは満足しました。ずっしりとした読後感に心地よさも覚えました。

途中、あまりにも「事実は小説よりも奇なり」的な偶然に頼った展開が気にならないではなかったのですが、本作品の価値を損ねるものではありません。それにしても、道尾氏は小説が上手いなあ。愛妻にもお奨めの一冊です。

ところで、この小説を読み終わった今、中町信『模倣の殺意』をダウンロードして読み始めました。

経済学者・齊藤誠氏と伊藤秀史氏の「朝日2面の広告にあったが、中町信『模倣の殺意』(創元推理文庫)、30万部突破なんだ。私も今回の復刻を契機に出会えた作家だけど、純粋なフィクションの楽しさを味わせてくれる。」(齋藤氏)「全然知りませんでした.kindle版もあるので,買ってみましょう.kindle版で叙述トリックを読むというのはおもしろい経験かも.情報ありがとうございます.」(伊藤氏)というツイートに影響されてしまいました。

再び浦賀和宏氏について

先日、愛妻と二人で歩いていましたら、彼女の知人に出会いました。ワタクシは、初対面でしたが(初対面のつもりでしたが)、向こうはワタクシのことを「見たことがある」と言っていました(愛妻と夫婦とは思っていなかったみたい)。

ワタクシが夫であることがバレてしまったことを愛妻は妙に嫌がっていたな〜。どういうことでしょう?ちなみに、そのときワタクシはビンビンにピンクでした。その知人曰く「二人一緒にピンクを着ればいいのに」。

さて、5月に入ってから、浦賀和宏氏の作品を立て続けに5冊読みました。いずれも、キンドル版です。

最初に読んだのが、たまたま見つけた『彼女は存在しない』(前にも書きましたね)。ワタクシの好きなタイプの叙述ミステリで、ワタクシは面白く読んだのに、アマゾンのカスタマー・レビューが酷いので、義憤にかられて(?)、次々とダウンロード。

本当に隙間時間だけ使っての読書でしたが、5冊ともあっという間に読み終えました。いずれも水準以上と感じました。今まで浦賀氏のことを知らなかったワタクシは反省しなければなりません。

ただ、『地球平面委員会』だけは、たぶん一部の人にしかわからないであろう(?)オチが残念でした(「こんなのあり?」という感じでしたが、その筋のマニアには面白いのかな?ネタバレになるのでこれ以上書けないけど)。それと名前の謎の真相にも脱力。まあ、青春小説として読んだので後悔はありません。

『世界でいちばん醜い子供』も、実はシリーズ物の1冊で(しかし、キンドル版はこの作品しか出ていない。紙版でもこれ以外は絶版状態)、ところどころ、前作を読んでないとわからない部分があったのが残念。しかし、細部を気にしなければ、独立した作品として読むことができますし、嫌いではないなあ。

要するに楽しく読書できたのであります。しかし、浦賀氏の過去のかなりの作品が絶版状態で読めなくなっているのはまったく残念です。何とかキンドル版で復刊して欲しいなあ。

浦賀和宏のアマゾンでの評価が低いのはなぜか?

以前、このブログで作家・北川歩美氏の作品に対するAmazonのカスタマー評価が低過ぎることに疑問を呈したことがあります。
http://aisaikaken.blog93.fc2.com/blog-entry-418.html

最近、また同じようなことを感じました。今度は、浦賀和宏氏の作品に対するカスタマーレビューです。特に、『彼女は存在しない』について。

たとえば、その中の一人のレビューは、次のような具合です(カラー部分が引用箇所)。

「まず、読み始めてすぐに作者の文才のなさに驚きました。/素人女子高生の携帯小説でも読んでいる感覚。/こんな文章でも小説家ってなれるんだ…と常々感じるため登場人物に全く感情移入も共感もできず読み進めるのにとても時間がかかりました。(中略)購入した本だったので、お金と時間の無駄でした。」

「う~ん」、これは酷評し過ぎだなあ。ちゃんと読んだのかなあ?ワタクシは浦賀氏の文章はプロの文章だと思いますし、最後まで「上手いなあ」と思って読みました。

「時間がかかりました」とありますが、ワタクシは買ってすぐに読了。叙述ミステリですが、最初に「多分こういうことなんだろうなあ」と思ったことが大筋では当たっていましたが、それでも「十分面白い!」と感じましたし、見落としていた伏線もあって、「やられた!」と思いました。

それにしても、タイトルが、フェア過ぎる!このタイトルで読者に大筋を予測させてしまいながらも、意外性を出すという難しい技に挑戦しています。これは職人芸です!

と言うわけで、十分に叙述ミステリの醍醐味を味わうことができたのであります。それなのに、上で引用したカスタマー以外にも、否定的なレビューのオンパレード。これらのレビューに対して、「寄って集って、みんな調子に乗りすぎだよ!」と義憤のようなものまで感じてしまいました。

なお、浦賀氏の別の作品も読みたくなりましたので、『彼女は存在しない』の読了後に即、『彼女の血が溶けてゆく』をダウンロード。これも面白く、一気読みしてしまいました。と言うわけで、さらに『眠りの牢獄』をダウンロードし、読み始めたところであります。

それにしても、Amazonのカスタマーレビューって、どこまで信用してよいのか・・・(褒め過ぎも、「関係者かな?」なんて勘ぐってしまいます)。愛妻も「100%信じてもねえ~。受け取り方も人それぞれじゃないの?」と言っています。まあ、自分の嗅覚を信じるしかありませんねえ。

久坂部羊『医療幻想』

久坂部羊氏と言えば、『廃用身』というショッキングな医学小説でデビューされた医師兼作家です(ホラー小説のようで、妙にリアル、それでいて考えさせられる小説でした)。

その久坂部氏が、これまたショッキングなタイトルの新書を出されました。

新書008_convert_20130214170104

とても気になっていたのですが(オビもピンクだしね)、病理学者で人気ツイッタラーの仲野徹氏(阪大教授)のツイッター(ワタクシ、毎日愛読)で、先日、以下のように紹介されていました。

「久坂部羊の新作『医療幻想』、こんなにほんまのことを書いたらあかんがな。だまされたと思ってぜひ読んでほしい。医療というものを考える格好の題材を与えてくれる。読み終えて、自分がどういう医療を望むかを決めればいい。友達やし、☆五つ!」

いずれ読もうと思っていましたが、「仲野先生がこのように言われるからには」と優先順位を変えて、さっそく買って読みました(隙間時間に一気読み)。

オビに「その治療に、根拠はない!点滴・消毒・抗がん剤・健康診断・・・」とありますように、内容は多岐にわたります。うすうす気づいていたことや、「我が意を得たり」という部分も少なくないのですが、「ええっ?そうだったの!」と認識を改めた内容も多く、読後、深く考え込んでしまいました。

特に、多くの人に読んでいただきたいのが、第5章の「高齢者の医療幻想」。「望ましい最期を迎えることは、よほど幸運に恵まれないとむずかしく、たいていは嘆き、苦しみ、悔やみながら亡くなっていく」(p.132)という言葉は大変重く感じました。

きれい事を口にする人などに特に読んでいただきたいのですが、著者自身、「幻想はよくないと書きながら、本書に書いたこともまた、私の経験と思い込みによる”幻想”である可能性もある」と「おわりに」に書かれているように、「鵜呑み」にするのではなく、この本を材料に自分の頭で考えるべきでしょう。

たぶん、医療の問題に、唯一の正解はないと思いますが、本書の効能として、少なくとも「思考停止」は回避できます(「思考停止」が一番まずいと思うんだなあ)。さっそく、愛妻にも一読を勧めました。

*書誌データ
http://www.amazon.co.jp/dp/448006706X

山田耕嗣『BCLマニュアル』

一昨日,「BCL」を話題にしましたが,電波少年DPLが当時愛読していたのが山田耕嗣著『BCLマニュアル』(電波新聞社,1975年)です.

もう,自分にとってバイブルのような存在で,『時刻表』に次ぐ愛読書でした.最後はボロボロでした.現物を残していないのが極めて残念です.

世界各地の放送局の周波数が網羅されており,受信レポートの書き方なども懇切丁寧に解説されていたように記憶します.山田耕嗣氏は「神様」のような人だと思いました.

また,山田氏の書斎(と言うかラボと言うか)の写真が最初の方に出ており,沢山の受信機の中で,コリンズの当時100万円もする受信機が光っていました.「大人になったらこんな書斎を持ちたい!」と子供心に思いました.

DPLの勉強部屋も,かなり影響を受けまして,「スカイセンサー5900」を中心に,ラジカセ(ナショナルMAC!)や,「電子ブロック」,父親の使わなくなった旧式短波ラジオなどを並べて,さらにその横に,当時定期的に買っていた『ラジオの製作』といった雑誌を並べて悦に入っていました.単純であります.

「青年の書評」のカテゴリーに入れましたが,全然書評になっていませんね.ただの思い出話でした.

ただ,今となっては電波青年にならなくて良かったなあと思います.ますます愛妻孝行しなくなりますから,鉄道青年だけで十分です.

関数電卓の本

少年時代,シャープの関数電卓ピタゴラスのテレビCMを見て憧れて以来(名前が良いですね.科学に憧れる少年の心をくすぐります),何となく関数電卓というものが気になる存在であり続けています.パソコンを数台保有している現在でも変わりません.

複雑な計算はコンピュータにお任せの時代に,「今更関数電卓?」と思われるかも知れませんが,エンジニアの間では関数電卓は健在ですし,ポケットからサッと出して直ぐに科学技術計算ができる関数電卓は,今後も無くならないでしょう.

そういうわけで,関数電卓(CASIO fx-993ES)をまた買ってしまいました(もう何台目かなあ~).100円ショップで電卓が買える時代に,5000円近くしましたが,ソーラーで動きますし,数式が自然に近い形で表示されるNatural Displayで,なかなか気に入っています.愛妻の前でサッと取り出して格好をつけたりしています.

ついでに,関数電卓の能力をとことん引き出してみようと思い立ち(今まで説明書も見ないで適当に使ってきたので),下の写真の本も買ってしまいました.

関数電卓135_convert_20120225172128

Amazonの内容紹介を引用しましょう.

本書は、関数電卓の使い方を基礎から丁寧に説明しており、かつ三角関数や対数など大学教育で必須の概念を関数電卓を通じて学ぶことができる、いままでにないテキストです。/平易な文章とイラストや図解により、初学者でも理解できる内容になっています。/ぜひ本書を活用して、関数電卓のポテンシャルを引き出し、延長された頭脳として使いこなしてください。 (引用おわり)

類書がなかなか無いので貴重な一冊ですが,期待以上に面白い本でした.著者の遠藤雅守氏は東海大学理学部准教授を務める応用物理学者で,物理の分野の計算例が多いのですが,文系読者にも十分楽しめます(と思います.でも数式アレルギーの人にはどうかな?).

関数電卓を使いこなすための実用書としても利用価値が高いのですが,科学技術計算の周辺の話も含めた科学読み物としても秀逸の出来だと思います.

ついでに,遠藤氏による「関数電卓博物館」というサイトも非常に面白いので紹介しておきましょう.
http://teamcoil.sp.u-tokai.ac.jp/calculator/Museum/index.html

産業考古学的にも興味深いものです(過去の計算機は,産業考古学の分野では産業遺産として扱われます).一見の価値ありですよ.

ところで,物理学者のフェルミは計算尺の達人としても有名ですが(遠藤氏の著書でも「はじめに」にこの話が出てきます.計算尺は奇しくも関数電卓に駆逐されましたが),計算尺のようなローテク道具で高度な計算をこなす姿はとても格好良いと思います.関数電卓を使いこなす姿もそれに通じるところがあるように思うのですねえ.

『関数電卓で学ぶ経済学』のような本を書いてみたいな.

書誌データ:
http://www.amazon.co.jp/dp/4863340281/

血と鉄と金の世界変革

大学はすっかり春休みモードですが,DPLは毎日大学に通っています(愛妻も春休みとは程遠い生活).毎日,研究以外にも何か仕事があるのですが,学期中よりは自由度が高いのが嬉しいですね.

さて,大学からの帰宅途中にたまたま次の書物を見つけました.

世界鉄道史134_convert_20120221172843

『世界鉄道史』,実に大きなタイトルですが,物理的なボリュームも結構あります.ハードカバーで500ページほど.サブタイトルになっている『血と鉄と金の世界変革』が,原タイトル”BLOOD, IRON & GOLD : How the Railways Transformed the World”の意訳になっています(原書の発刊は2009年).

勿論,即購入.まだ電車の中で少し読んだだけですが(電車の中で読むには少し重い),訳が良いのか,冒頭から引き込まれました.

読了していないので,流石に書評はできませんが,著者が言うには「「世界の鉄道」とか「世界各国の線路」というタイトルの本は,どっさりあるが,ほとんどは列車の技術を絶賛するだけか,社会的な影響については上っ面をなでているだけだ.私が書きたかったのは,鉄道というものが,私たちの生きているこの世界を作り出すのにいかに大きな影響を与えたか,そして事実上すべての国で,いかに発達と変化をうながしてきたかということだ」(邦訳p.8.下線は引用者)とのことです.「これは面白く無いわけがないと直感しました.

著者は,Christian Wolmar,英国で広く知られた交通・運輸分野の著述家です.本書の冒頭で,"Fire & Steam"という氏の前著(2007年刊)がいきなり登場しますが,英国鉄道史の本のようです(知らなかった!早速,本書の原書と一緒にアマゾンに注文してしまったよ).

ところで,「訳者あとがき」に「鉄道は本来ならまじめな研究対象になって当然の重要なテーマなのに,トレインスポッター(引用者注:「鉄道オタク」のこと)が社会の注目を集めたばかりに,鉄道好きと言うだけで変人扱いされ,揶揄の対象にされがちなのは困ったことだ」(同書p.484)という著者の言葉が紹介されています.

訳者の安原和見氏は,これに対して「「オタク」呼ばわりされて肩身の狭い思いをしている(かもしれない)日本の鉄道ファンにも,まったくそのとおりと共感される向きも多いのではないだろうか」(同書p.484)と書いておられますが,まさにDPLが日頃から思っていることそのままで,「まったくそのとおり!」であります.

と言うわけで,著者のスタンスから言っても,中味が大いに期待できそうですが,春休みは幾つか宿題(原稿)もあるしなあ~.しばらくは,通勤の電車の中でのお楽しみに留めておきましょう.

書誌データ:
http://www.amazon.co.jp/dp/4309225632/

貫井徳郎『乱反射』

今日は本の紹介です.

最近は,もっぱら物理学の啓蒙書ばかり読んでいたのですが,久しぶりに読んだ小説がこれ.

本130_convert_20111221153107

本の紹介のときは,画像のサイズをもう少し小さくしているのですが,設定を間違えてしまいました.大きくてすみません.設定を変えるのも面倒なのでそのままにしておきます.

帯に,「第63回日本推理作家協会賞受賞作」とありますが,少なくとも狭い意味での「推理小説」ではありません.「犯罪小説」ですらありません(狭義の「犯罪」は起こりませんので).

複数の「犯人」(?)は早い段階で判明していますが,倒叙ミステリというわけでもありません(その「変型」というとらえ方も出来ないことはないと思いますが).私は,この作品を「小市民文学」(そんな言葉ある?)として読みました.

ごく平凡な市井の人々が,生活の中で犯す「小さな罪」の偶然の連鎖が,幼児の事故死を帰結するという話です.そして,子供の死に納得できない父親(新聞記者でもあります)が,その死の背後にある連鎖の「真相」に最終的に辿りつきます.

私の拙い要約では,作品の本質がぼやけてしまいますが,読んで損は無い小説であると確信しますので,ご自分の目で確かめられるとよいと思います.ただし,文庫で600頁近くありますので,普通の人は一晩で読むのは無理かも知れません.

長いだけでなく,事件が始まるのは,中盤が過ぎてからです.それまでは,平凡な人々の平凡な日常,その中での「小さな罪」が延々と書き込まれます.ひょっとすると,前半で退屈して頁を閉じてしまう人がいるかも知れません.

しかし,事件発生後は,スピーディに物語は展開します.前半は,位置エネルギーを徐々に蓄えるジェットコースターの上りのようなものと思って,忍耐強く読まれることをお勧めします(関係無い話ですが,DPLは大のジェットコースター嫌い.愛妻に笑われています).

それにしても,「小市民」の心の動きが実に巧く描かれています.先ほど私が,本作品を「小市民文学」と呼んだ理由です.様々な「心の中での言い訳」「自分の行動の合理化」,身に覚えのある人も少なくないでしょう.実は,後半よりも前半を私は楽しみました.

書誌データ:
http://www.amazon.co.jp/dp/4022646381/

丸田祥三×平沼義之『廃道』

豆乳チャイのマイブームは続きまして,ここのところ,毎日のように愛妻におねだりしています.しかし,以前,「豆乳が美味しくないとダメだよ」と書きましたが,あまり濃厚なのはチャイには向かないようです.チャイはやはりスパイスが命かな.

さて,久しぶりの本の紹介です.廃道探索の第一人者平沼義之(ヨッキれん)氏の人気サイト『山さ行がねが』(http://yamaiga.com/)で発刊が予告され,今か今かと楽しみにしていたのがこれ.

廃道127_convert_20111121103350

今月の発売と同時に購入しました.写真は,廃墟写真集の『棄景』などで有名な丸田祥三氏,文章は前出の平沼氏という黄金コンビです.

正直,丸田氏の作風は,個人的には一寸苦手なのですが(本当に個人的好みですので,評価される方は多いと思います),多くの読者を満足させる仕上がりになっていると思います.贅沢を言えば,もう少し版型を大きくしていただき,大きな写真で鑑賞したかったなあ・・・.

それにしても,平沼氏の文章は,廃道への<愛>に溢れています.廃道入門として読むことも出来るでしょう.「廃道とは,先人の記憶である」という氏の言葉が心に染みます.

書誌データ:
http://www.amazon.co.jp/dp/4408008389/

サイモン・シン『宇宙創成』

「自分と愛妻がなぜこの世に存在するのだろう?」「自分とは何だろう?」「そもそも,この世とは何だろう?」と時々考えます.あまり深く考えると眠れなくなりますから,ほどほどに考えます(ほどほどなので,布団に入るとすぐ寝てしまいます).

哲学書でも読んだらよいのでしょうが,もとブルーバックス少年のDPLは,宇宙物理の本(と言っても専門書ではなく啓蒙書)を繙きます.それで答えが得られるわけではなく,ますます落ち着かなくなる面も無いわけではないのですが,それでも読みます.

あまり根拠もなく,「人文系の人間ほど,哲学書はほどほどにして,宇宙物理を勉強するべきだ」と思っています.同時に「脳の勉強もするべきだ」(「通俗脳科学本を読め」というわけでは全然ありません)とも思っています(今日の話題には直接関係ありません).

そんなDPLが最近読んだ素敵な本が,サイモン・シンの『宇宙創成』の文庫本(上下2巻)です.訳者は,もちろん青木薫氏です.

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別に今年のノーベル物理学賞が,「遠距離の超新星観測を通じた宇宙の膨張加速の発見」に対して与えられたので,急に関心を持って読んだわけではありません.本書を読んでから,今年のノーベル物理学賞の内容を知りました.

シン著&青木訳という黄金の組合わせは,『フェルマーの最終定理』で経験済みでしたので,「面白くないわけがない」と思いましたが,期待を裏切られることはありませんでした.即読了です.

宇宙創成の謎に挑んできた人間の努力とロマンの歴史です.同時に天文学や宇宙物理の入門的知識が得られるように書かれています.サイモンの叙述は実に巧いですね.

宇宙物理のような分野を垣間見ますと,小さなことで右往左往している自分が阿呆らしくなります.それでよいのでしょう.

書誌データ:
http://www.amazon.co.jp/dp/4102159746/

加藤英明・岡田克彦『人生に失敗する18の錯覚』

GISの専門書を買いに書店に行って,ついでに「帰りの電車の中で読む本どうしようかな?」と新書の棚を眺めていましたら,下の写真の本が目に入りました.

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この手の本はあまり買いませんが,「hoskw先生(同僚)がツイッターで推薦されていたなあ(9月24日のツイート)」と思い出し,手にとってみました.

hoskw先生の推薦のことばを引用しますと,「面白くて勉強になって人生の役に立つ経済の本はそんなにないですが,この本はこの3つを満たしている感じ」ということです.

なるほど,著者もしっかりした方ですし,ざっと立ち読みしますと内容も面白そうです.と言うわけで,目的の本と一緒に購入してしまいました.

サブタイトルに「行動経済学」の文字がありますように,欧米の行動経済学の実証研究が主なネタ元になっています(それだけではありませんが).最近,行動経済学関係の一般書の出版が相次いでいますので,それらのものとかぶるネタもありますが,別に気になりません.

小さな本ですが,人生に役立つ命題が詰め込まれています.「興奮状態ではリスクに鈍感になる」なんて,よく自覚しておいた方が良いかも知れません.

著者らの次の言葉など,深い含蓄が感じられませんか?

「恋愛関係という興奮状態が作られると,周りが見えなくなり,どんな困難でもこの人となら乗り越えられると錯覚(!)します.この錯覚が結婚への道を選ばせるとすれば,錯覚もそれほど悪くないのかもしれません」(p.23)

そう言えば,スタンダールも『恋愛論』の中で「恋愛とは美しき誤解なり」と言っていますね.世の中を見回しますと,「錯覚」や「美しき誤解」から醒めてしまった人が少なくないようですが,DPLは今でも「愛妻とならどんな困難でも乗り越えられる」と思っています.

話が逸れましたが,hoskw先生同様,DPLもこの本をお勧めします.ただし,オビに書いてある「世界一やさしい経済学を学んで」の部分は,一寸語弊があるように思います.

先に書きましたように行動経済学の成果に基づいて書かれていますので,「経済学の本」と言っても「間違い」とは言い切れませんが,まったくの初学者がこれを読んで,「これが経済学だ!」と思われるのも問題かな?

一通り,標準的な経済学を勉強した学生さんが,本書を「行動経済学入門(の入門)」として使うのなら良いのですが,まったく経済学を勉強していない人が,オビの惹句に誘われて「経済学入門」や「行動経済学入門」として本書を読むのは止めた方がよいでしょう.

もちろん,経済学を勉強していない人にもお勧めしますが,その場合は,オビの「経済学云々」は無視して,素直に「人生訓」として読んだ方がよいと思います.読みやすい文章で,ウィットにも富んでいますので,一気に楽しく読むことができるでしょう.

書誌データ:
http://www.amazon.co.jp/dp/4062726882/

新谷尚紀『民俗学とは何か』

先ほど,3泊4日の学会出張から戻りました.日本農業経営学会で,日曜日まで学会は続きますが,勤務校の用務がありますので今日で切り上げました.遅くなりましたが,愛妻の手料理の方が良いので空き腹を抱えて戻りました.

さて,今日は夏休みに読んだ本の中で印象に残った1冊を紹介しましょう.

民俗学122_convert_20110905161624

タイトルからおわかりのように民俗学の本です.しかし,ただの入門書ではなく,サブタイトルにありますように,柳田国男,折口信夫,渋沢敬三という我が国民俗学界の3巨人を通して学び直すということで,学史的色彩の強い書物となっています.

ちょっと「手抜き」になりますが,アマゾンの商品紹介を引用しましょう.

日本民俗学はフォークロアでも文化人類学でもない。柳田國男・折口信夫・渋沢敬三原点確認によりそれらの誤解を解き「もう一つの歴史学」として捉え直す。民俗学の新たな出発と豊かな可能性を描く民俗学入門

DPLも,「民族学」(「文化人類学」とイコールと言うと語弊があるでしょうか)と「民俗学」が違うことぐらいは理解していたつもりですが,「民俗学=フォークロア」という認識はありました(それは「誤解」だということが本書で丁寧に説かれます).

民俗学の「概論的教科書」を期待しておりましたので,その点で申しますと,一寸当てが外れましたが(しかし,それはサブタイトルを良く見ていないDPLが悪いのです),しかし,実に平明な文章で,門外漢にも我が国の民俗学の特徴や流れ,人間模様がよくわかりました.

自分の専門分野でも,「同じ名前なのに何とやっていることが違うことか」と叫びたくなるぐらい,学派の違いを意識させられることがありますが,「民俗学も同じなのだなあ」というのが率直な感想です.

DPLは地理好きなので,柳田国男と言えば,「方言周圏論」をすぐに思い出すのですが(多くの人には『遠野物語』かも知れないけど・・・),戦後の民俗学では,「方言周圏論」は1970年代以降の東京教育大学の研究者を中心に徹底的に批判・否定されたという説明が意外でした(「方言周圏論」って,てっきり通説になっているのかと・・・).

しかし,著者は,柳田の方法を基本的に継承し,近畿地方の埋葬墓地の呼称分布図を作成し,埋葬墓地の呼称が柳田の「方言周圏論」と見事に一致する様子を明快に示してくれます.これは,なかなか圧巻でした.

柳田国男は,もともと農政学者でしたから,大学で農業政策も講じているDPLには親近感がありますが,門外漢がこれ以上,民俗学について書くのは止めましょう(頓珍漢なことを書いてしまいそうです).

「期待した内容とは違っていた」とは申しましたが,しかし,面白い本でした.名前だけ聞きかじっていた人物の写真もふんだんに盛り込まれており,それを眺めるだけでも楽しめます(恥ずかしながら,折口信夫の顔は,本書で初めて拝見しました.貴重な講義風景の写真もあります).

レディ・ガガを聴きながら一気に読んでしまいました.それにしても,吉川弘文館って,比較的廉価で良い本を出しますね.

書誌データ:
http://www.amazon.co.jp/dp/4642080538/

佐藤雅彦+ユーフラテス『日常にひそむ数理曲線』

以前,hoskw先生に感化されて買ってみたDVDブック(下の写真),なかなか良かったです.

数理曲線103_convert_20110525195423

ちょっと手抜きをしまして,アマゾンの商品説明を引用しましょう.

パチンコの玉は落下するとき「放物線」を描き、自転車のタイヤ上の一点は「サイクロイド曲線」を描き、東京タワーの影は「双曲線」を描いて東京都心を横断します。/このように、日常世界のあちこちに、実は簡単な数式で表される「数理曲線」が隠れています。/雑多な日常の中に隠されたシンプルで美しい数理曲線を「発見」する楽しさを、スタイリッシュにまとめ、数学に興味のない人にも驚きと心地よさをあたえる作品。(引用ここまで)

なるほど写真も綺麗ですし,映像も綺麗です.随所に仕掛けられた工夫が光ります.何となく寺田寅彦の随筆を思い出してしまいました.DPLも,子供の頃にこういう作品を見ていたら,もう少しマシな大人になっていたことでしょう.

内容自体面白かったのですが,最も刺激を受けたのは,やはり「見せ方」です.「教育とはクリエイティブなものだ」と思わせるものがあります.

今度は,お茶でも飲みながら,愛妻と一緒に鑑賞しようっと.

書誌データ:
http://www.amazon.co.jp/dp/B003MQK8EC/
プロフィールなど

Author:プリティラヴ博士(DPL)
くちびる4_convert_20091214215454
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いまも愛妻に心のトキメキを覚えるハート庵主人・プリティラヴ博士(DPL)が,皆さまに「愛」の御福分けをいたします.愛妻家および愛妻家ファン必読!過去記事の一覧はこっちだよ.
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DPLのプロフィール:愛妻家,甘党男子,散歩家,鉄道青年,活字中毒者,長髪ピンク野郎,英国かぶれ,農学博士,自称経済学者,大学教授(もと経済学部長),馬術部長(残念ながら乗馬経験はありませんが,象にはインドで乗りました)など.主に大阪周辺をチョロチョロしています.

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