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今野浩『ヒラノ教授の線形計画法物語』

岩波書店から2014年3月に出た「ヒラノ教授シリーズ」の最新作(たぶん)です。大学の生協書籍部でたまたま見つけて購入。

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今まで読んだ「ヒラノ教授シリーズ」、どれも「たちまち読了」の面白さでしたので、「ハズレなし」と判断して中味を見ないで買いました。

オペレーションズリサーチ(OR)に特に関心がない「一般読者」には、「少しテーマが地味かな?」と思いましたが(もちろん、ORの世界では中核になる方法ですし、その意味では決して地味ではありませんが)、普通に楽しく読めそうな内容でした。今野氏の筆力は流石です。

もちろん、線形経済学が流行した時代を経験した世代の経済学者も、楽しめるのではないでしょうか?(ワタクシはもっと若い世代だYo!でも、DOSSOの『線型計画と経済分析』は原書も邦訳も持ってるYo!)。もっとも、今では、経済学専攻の研究者や院生で、線形計画法に関心を持つ人は少ないかも知れません。

でも、あの小宮隆太郎氏が、経済学部の助教授時代に線形計画法の講義をして、それを工学部生の今野氏が受講したくだりなんて、経済学徒には面白いと思うよ。

ちなみに、ワタクシの専攻する農業経済学の世界では、農業経営計画や地域農業計画で、今でも線形計画法やそのバリエーションが盛んに使われていますので、ワタクシ自身は非常に興味深く読ませていただきました。

農学部の学生時代に、単体法を一所懸命、手計算でフォローしながら勉強して、「うまいこと考える人がいるなあ~」と感心した記憶も蘇りました。

この単体法の発明者であるダンツィク教授(今野氏のスタンフォードでの師匠でもあります)についての記述が当然ながら多く、クープマンス教授とカントロビッチ教授に、線形計画法の分野でノーベル経済学賞が授与されながら、最大の功労者であるダンツィク教授に授与されなかった件など、読んでいてワタクシの方が悔しくなってしまったのであります。

カーマーカー特許裁判についても詳しく、「新奇性が無い数学公式」が特許になってしまったこの事件について、今回改めて事実を確認して、読んでいて無暗に腹を立ててしまったり(もちろん、カーマーカーやAT&Tベル研究所に対して)、なかなか興奮(?)しながら本書を読みました。

まあ、一言でいえば「面白い!」本でありました。また、愛妻へのお勧め本リストに加えておきましょう(最近、お勧めし過ぎかな?)。

そう言えば、昔、『経済セミナー』誌上で、塩沢由典氏がダンツィク教授の『線型計画法とその周辺』(小山昭雄訳)についての好意的書評を書いておられて、それを見て早速、同書を購入した記憶が蘇りました(この本の原書については、ヒラノ教授は「バイブル」と表現しておられます)。

実は、ダンツィク教授のこの本、まだ読了していなかったんだった。これを機会に再挑戦しようかな。
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コメント

昔なつかしい話

たまたまこの記事に出会わせました。『ヒラノ教授の線形計画法物語』、わたしも買いました。経済セミナーの記事で『線型計画法とその周辺』をお買いになられたなんて、すごく昔のはなしですね。いまでは、経済学者のほとんどは線形計画法なんて、忘れているか習ってもいないのではないでしょうか。

これは1970年代以降のマクロ経済学が基本的に一財モデルになり、それを研究すれば十分という雰囲気から生まれたことと考えています。

つい最近も、『システム制御情報学会』というところからたのまれて、「技術はなぜ進化し続けるのか」という解説を書きました(同会誌7月号掲載予定)。この話のひとつのネタに線形計画法の計算複雑性を使わせてもらいました。

整数線形計画の計算複雑性は、無条件にはNP困難ですが、今野さんの本に示されているように、巨大な問題が整数できちとん解けることがほとんどです。どこかに特異点が存在して一般的に解こうとするとそこに引っかかるような構造になっているのでしょう。

Re: 昔なつかしい話

学生時代から憧れていました塩沢先生ご本人からコメントをいただき、大変感激しております。『市場の秩序学』など愛読させていただいております。

実は、先生の経済セミナーの記事、その後も私に影響を与え続けていまして、先生の記事を読むまでは、「簡潔に書かれた教科書の方がよい」という考えだったのですが、『線型計画法とその周辺』に対する先生の評価を読んで、ゆったりと説明されて(結果として)分厚くなっている教科書のよさを初めて認識しました。以後、私はできるけ分厚い教科書を選んで読むようになりました。

『システム制御情報学会』の「技術はなぜ進化し続けるのか」、楽しみです。

> たまたまこの記事に出会わせました。『ヒラノ教授の線形計画法物語』、わたしも買いました。経済セミナーの記事で『線型計画法とその周辺』をお買いになられたなんて、すごく昔のはなしですね。いまでは、経済学者のほとんどは線形計画法なんて、忘れているか習ってもいないのではないでしょうか。
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> これは1970年代以降のマクロ経済学が基本的に一財モデルになり、それを研究すれば十分という雰囲気から生まれたことと考えています。
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> つい最近も、『システム制御情報学会』というところからたのまれて、「技術はなぜ進化し続けるのか」という解説を書きました(同会誌7月号掲載予定)。この話のひとつのネタに線形計画法の計算複雑性を使わせてもらいました。
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> 整数線形計画の計算複雑性は、無条件にはNP困難ですが、今野さんの本に示されているように、巨大な問題が整数できちとん解けることがほとんどです。どこかに特異点が存在して一般的に解こうとするとそこに引っかかるような構造になっているのでしょう。

線形計画とか活動分析とか

昔は経済学の学生はみなふつうに線形計画や活動分析(activity analysis)を勉強したものでしたが、いまはほとんど忘れられています。もっとひどい話は、いまは経済学部では産業連関表をふつう教えないのだそうです。ある大学の修士課程の入試問題作成を頼まれたので、産業連関表関係の穴埋め問題を作ったら、いまは教えていなから、この問題は使えないといわれました。
(プリティラブ博士の学部ではどうですか。)

DSGE(動学的確率的一般均衡)などというものが普通の分析装置になっていても、基本的に(時刻はことなる)一財モデルを扱えばいいなどいう風潮がこうした結果を招いているのでしょう。

プリティラブ博士のお仕事を見ますと、産業連関表をはじめ、隣接行列とか、いろいろ行列を使っていられます。こういうものも、いまの経済学ではあまりつかわないのではないでしょうか。

こうしたものは、本当は必要なのに、忘れられてしまっているのではないかと危惧しています。なんといっても経済学は、多数の財・サービスの生産と交換が基本のはずですから。

宣伝になりますが、わたしの近著『リカード貿易問題の最終解決』は、ほとんど全面的に活動分析時代の実線形代数に依存しています。貿易の特化パタンってグラフ理論そのものです。とっいても二階堂副包先生の『経済のための線型数学』でじゅうぶんなのですが。使っている数学が共通しているので、プリティラブ博士には、興味深く読んでいただけるかもしれません。

Re: 線形計画とか活動分析とか

私の学部では、「産業連関論」という独立した科目を開講しています(たぶん、先生もよくご存知の進化経済学専攻の同僚が担当しています)。さらに、大学院の授業でも、都市経済学専攻の同僚が、今も産業連関分析を教えているようです。他大学に比較しますと、うちの学部・研究科は、産業連関分析を比較的教えている方かと思います。

私は、学生時代に、たまたま森嶋先生の『産業連関論入門』を書店で手に取って(発刊後だいぶ経っていましたが、まだ絶版になっていませんでした)、購入し、たちまち引き込まれ、単なる計算ツール以上の意味を持つことを知り、大変興味を持ちました(同じ頃、二階堂先生の『経済のための線型数学』も勉強しました)。

私も、先生がおっしゃるように、経済学は、多数の財・サービスの生産と交換が基本だと思いますので、産業連関分析はもっと教えられてもよいと思っています。

先生の『リカード貿易問題の最終解決』もぜひ拝読させていただきたいと思います(二階堂先生の『経済のための線型数学』も再読したくなってきました)。

産業連関論の独立した講義

近畿大学経済学部には、産業連関論の独立した講義があるのですか。すばらしいことです。せび、これは存続させてください。

わたしも、昔、大阪市大で一年生に「国民経済計算」を講義をしていたとき、まず産業連関表を示して、読み方を解説し、そのあと、各行各列の総和が、国民経済計算ではどこに現れるかという順序で、国民経済計算を教えていました。

こういう準備なしに、ただ集計量の国民経済計算のみを教えると、付加価値概念も本当には身に付かないのではと思っています。

独立の講義となると、産業連関表を使って、いろいろな分析をするということでしょうが、そこまでいかなくても、こういう表がある、それで経済循環の大枠がこう見える、というあたりは、ぜひどの大学の経済学部でも教え続けてほしいものです。

Re: 産業連関論の独立した講義

はい!是非存続させたいと思います。
先生の言われることはよくわかります。
ところで、最近(と言っても2010年ですが)出た、齋藤誠氏らの『マクロ経済学』(有斐閣)は、700ページを超える総ページ数の中で90ページ近くを国民経済計算の説明に当てており、その中で、産業連関表を使った説明を試みられております。これは、先生がされていた解説方法に近いのではないでしょうか?

産業連関分析

気づいていませんでした。それはとてもいいことですね。700ページを超えるという『マクロ経済学』(有斐閣)は読んでも覗いてもいませんが、700ページぐらいの本にならないと、いまは産業連関表も出てこないのかもしれません。

これは先生のご専門でしょうが、アジアの貿易構造の分析には、やはり産業連関分析が必要で、いろいろな試みがあるようですね。もういちど再評価される時代がくることを願っています。

Re: 産業連関分析

アジアの貿易構造の分析は、私の専門ではありませんが、学部の同僚で、アジア経済研究所のアジア国際産業連関表を使って研究をしている人はいます。問題によっては、産業連関分析は今でも重要な手法の様です。

しかし、やはり、学部初年級の経済学の入門書あたりで、きちんと産業連関表は教えられるべきなのでしょうね。
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いまも愛妻に心のトキメキを覚えるハート庵主人・プリティラヴ博士(DPL)が,皆さまに「愛」の御福分けをいたします.愛妻家および愛妻家ファン必読!過去記事の一覧はこっちだよ.
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DPLのプロフィール:愛妻家,甘党男子,散歩家,鉄道青年,活字中毒者,長髪ピンク野郎,英国かぶれ,農学博士,自称経済学者,大学教授(もと経済学部長),馬術部長(残念ながら乗馬経験はありませんが,象にはインドで乗りました)など.主に大阪周辺をチョロチョロしています.

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