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あれ?今日も・・・

昨日に引き続き、ブログを始めた頃の過去記事(しかも読まれた形跡が無い記事)の再掲です。初期の書評シリーズの一つで、長いけど我慢して読んでね!

---ここから過去記事再掲---

昨日は「赤い糸」(DPL流には「ピンクの糸」)について書きましたが,「赤い糸」問題を考えるヒントを得ようと,書斎の本棚に未読状態で突っ込んだままになっていた長谷川眞理子氏の「雄と雌の数をめぐる不思議」を読んでみることにしました.

著者は,今更説明する必要も無いほど有名な行動生態学者です.この本の内容については,中公文庫版のカバー裏側に要約がありますので引用しますと,「性の起源から解き明かし,進化と自然淘汰による性比の偏りを,論証する.アオウミガメの卵は28度以下だとオスになり,30度以上だとメスになる.アカシカは順位の高いメスが息子を多く生み,低いメスが娘を多く生む等,具体的事例を交え,生物の性比の謎を,わかりやすく解説する繁殖生態学入門書」と言うことになります.

記述は平易ですが,多くの原著論文から最前線の研究が引用されており,分析的記述も多く,一般読者がスラスラ読むのは少々難しいかも知れません.しかし,その内容はパズルを解くような面白さに満ちています.小さい本ですが,流し読みせず,じっくり考えながら分析の含意を味わうべきでしょう.

生物の性比を決める要因を科学的に探求していく場合,この本にも書かれているように,2つのレベルがあります.1つは至近要因(性比決定の物質的基盤)の解明,2つは究極要因(そのような性比になっている進化的な意味)の解明です.この本では特に後者の解明に力点が置かれています.実際,著者も言う様に「生物学で何がおもしろいかといえば,究極要因に関する問題」であるとDPLも思います.究極要因を探る生物学は,DPLが勉強している経済学との親和性も高く,投資やコストと言った概念が単なるアナロジーではなく縦横に駆使されます(そう言えば,経済学と生物学にはゲーム理論,特に進化ゲーム理論と言う共通言語がありましたね).

この本はもともと1996年に出版された同名の単行本に,その後の研究動向を反映させて加筆修正されたものです.特に,著者自身による人間を対象にした分析が追加されています.例えば,生物学的理由で男児死亡率>女児死亡率となるのが一般的ですが,著者は,戦前の日本では一時期(1900年から1935年頃まで),幼児期から40歳頃までのすべての年齢階層で女子死亡率が男子死亡率を上回っていた(しかもその傾向が年を追って段々と拡大される)事実を指摘しています.この事実は,DPLには衝撃的でした(知らなかったのは,DPLの不勉強かも知れません).著者はこれを女工哀史,富国強兵政策,男尊女卑思想などに結びつけて考察するわけですが,開発経済学の問題意識にも通じるものがあります.

冒頭にも書きましたように,最初は「赤い糸」問題のヒントにと思って,DPLは本書を読み始めましたが,途中でそれはどうでもよくなりまして,究極要因を探る生物学の面白さに引き込まれていきました(一方,DPLには至近要因を探る分子生物学のような分野はどうしても興味が持てないのですね.個人的嗜好の問題ですが).本書は,経済学は勿論,社会学やその他社会科学を勉強している人々にも是非お勧めしたい書物です(もちろん,生物好きな人にはとりわけ興味深い内容でしょう).社会の見方が変わることは間違いないと思います.

ところで,肝心の「赤い糸」ですが,結局,この謎を解く鍵は本書からは得られませんでした.そもそも,本書でも紹介されているフィッシャーの性比決定の理論(大変美しい理論です)などでは,交配がランダムに行われる状況を扱っています.要するに,「どのようにして結ばれるか」は最初から問題にされていないわけですね.まあ,我々人間の世界も,マクロなレベルで見れば,男女がランダムに結ばれていると見なしても(近似しても)差し支えないのかも知れません.しかし,ミクロな個人レベルで見ますと,一つの「出会い」は一生に一回切りであって,一回切りであるが故に,どうしてもその「出会い」を意味付けしたくなるのが人情ですね.

例えば,確率論的には,宝くじの当選者になる可能性は,購入枚数が同じであれば,それを購入した人すべてに完全に等しくあるわけですが(当選者はランダムに選ばれている),しかし,実際に当選した当事者にとっては,それは一生の間に一度経験するかしないかの非常に特別な「幸運」であるわけです.当選者自身はそこに「神の意志」を感じるかも知れません.日頃から善行を心がけている人であれば,「神からのご褒美」と感じることでしょう.一方,男女の縁も,例え集団レベルではランダムであっても,やはり一つ一つの縁は,当事者にとっては一生に一度の特別な事象であって,そこに「神の導き」(つまりは「赤い糸」)を感じても不思議ではありません.「赤い糸」とは要するに,一回切りの特別な事象に意味づけをせずにはいられない人間の本性が見る幻と解釈するのが妥当なのでしょう.

とDPLは頭では考えていますが,しかしそれでも,DPLは自分と愛妻との間の「赤い糸」(「ピンクの糸」)の存在を未だに固く信じ続けています.DPLは生まれる前から愛妻と「ピンクの糸」で結ばれていたのであります.

最後は,長谷川氏の本に関する話題から随分外れてしまいましたね.読者のご寛容をお願いします.

今日ご紹介した本
長谷川眞理子著「雄と雌の数をめぐる不思議」(中公文庫,2001年)


---再掲ここまで---

相変わらず、このブログの初期の記事は長い。まあ、これを書いた頃は学部長じゃなかったしなあ~。とは言え、特に暇では無かったと思うけど、気分の問題かな?
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いまも愛妻に心のトキメキを覚えるハート庵主人・プリティラヴ博士(DPL)が,皆さまに「愛」の御福分けをいたします.愛妻家および愛妻家ファン必読!過去記事の一覧はこっちだよ.
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DPLのプロフィール:愛妻家,甘党男子,散歩家,鉄道青年,活字中毒者,長髪ピンク野郎,英国かぶれ,農学博士,自称経済学者,大学教授(もと経済学部長),馬術部長(残念ながら乗馬経験はありませんが,象にはインドで乗りました)など.主に大阪周辺をチョロチョロしています.

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