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散歩も旅も本質は同じだ

昨日の続き。ヘンリー・ミラーではありませんが、散歩も旅も同じようなものだとボクは思うのであります(ヘンリー・ミラーが言っていることとボクが思っていることは一寸ニュアンスが違うような気もしますが)。

と言うわけで、関連の過去記事再掲。このブログがスタートした頃に書いたものだ。

---ここから過去記事再掲---

DPLは学生時代,吉行淳之介の随筆を読むのが好きでした(小説の方は多分食わず嫌いなのだと思いますが,読む気が起こりませんでした).吉行氏は,随筆の名手であるのと同時に対談の名手でもありましたので,それらもよく読みました.当時は,日当たりの悪いじめじめした下宿で,積み上げた湿気た布団によりかかりながら黙々と本を読むのがDPLの娯楽でしたが,吉行氏の本もそうやって読みました.

その中でも,特にお気に入りが,今日ご紹介する本です.DPLが持っているのは1981年刊の講談社文庫版です(まだ講談社文庫のデザインが変わる前ですので今とは雰囲気が随分違います.下の写真).もう手垢まみれでボロボロです(この写真では綺麗に見えますけどね).

吉行_convert_20091112152004

例によって要約の手間を省くために,裏カバーの紹介文を引用しましょう.「家から一歩外に出れば旅だ,と考えるヘンリー・ミラーに共感し,自分の住む都会を歩きまわる中ですばらしい旅や風景を発見する,と語る著者の姿勢には,作家らしい感受性と想像力の重視がうかがえる.そのほか幼少時の思い出,交遊,文章観,身辺雑記等を綴り,吉行文学の基盤をあきらかにした卓抜エッセイ集」と言うことですね.

表題に期待して読みますと,ちょっと肩透かしを食らうかも知れません.本書の全体が「旅」に関わるわけではまったくなく,本書の表題の由来は,同じ題の随筆が一つ収録されているからということに尽きます.それも,わずか6頁!勿論,DPLは文句を言っているわけではなくて,本書の表題とは直接関係が無いその他の随筆群も実に味わい深いものばかりです.

しかし,ここでは,やはり「街角の煙草屋までの旅」と題する短い随筆に限定して,これを枕に少しお話をすることにしましょう.この随筆,旅にまつわる一見とりとめのない話です.まず,吉行氏は,ヘンリー・ミラーの次のような文章を引きます(以下孫引き).

「私たちが飲み屋や角の八百屋まで歩いていくときでさえ,それが二度と戻って来ないことになるかもしれない旅だということに気が付いているだろうか?そのことを鋭く感じ,家から一歩外へ出る度に航海に出たという気になれば,それで人生は少しは変わるのではないだろうか?」(p.50.なお,この文章の前後も引用されていますが,ここでは省略).

そして,以上のような文章を引用した後で,吉行氏は,「街角の煙草屋まで行くのも,旅と呼んでいい」(p.50)と,曲解を承知の上で断じておられます.そして,「以前から,自分の住んでいる都会の中を動くことを,私は旅と受け止めているところがあるようだ」(p.50)とも書いておられます.

DPLは,この「街角の煙草屋まで行くのも,旅と呼んでいい」という吉行氏の言葉が,大学一年生の時の初読以来,頭に染みついてしまいました(前後の文章は殆ど覚えていないにも関わらずです.今回読み直してみまして,あんなに何度も読んでいた筈なのにまるで初読のようでした).それ以来,DPLは毎日旅をしています.DPLにとって散歩が人生最大級の道楽ですが,この散歩は正真正銘の旅と言ってよいでしょう.これには,ヘンリー・ミラーも吉行淳之介もお墨付きを与えてくれるでしょう.

さらには,毎日の通勤通学だって旅です.本家サイトの方にも書きましたが,DPLは,道楽で大学の最寄り駅から大学までの経路を毎日変えています(いずれも,徒歩で15分前後の距離ですが).下車駅すら変えることがあります(徒歩時間は倍くらいになりますが).行きと帰りも勿論経路は変わります.ゆっくり沿道の家並みを眺めながら歩きますと,とても幸せな気分になります.旅に出ているときとまったく同じ気分です.電車の窓から見ますと,最寄り駅の周辺は何やら家が建て込んでごみごみした雰囲気が漂っていますが,その中を歩けば,色々な風景が展開します.

「こんなところによく残っていたな」と思わせる田畑が,家々の間にひっそりあったりします.蔵のある大きな農家(元農家?)が立ち並び,時空をスリップしてしまったかと感じさせる空間に迷いこむこともあります(最寄り駅から大学にかけては,もともと農村地帯だったのですが,大阪の膨張ととともに,都市に飲み込まれてしまったわけです).「ムラがマチの中に埋まっている」と言う感じですね.

それにしても,人間の「足」は最も素敵な乗り物だと思います.お金はかかりませんし,駐車・駐輪のことも考えなくてもいいですし,抜群に小回りがききますしね.雨に弱いのが難点ですが,それでも自転車よりはマシです.それに,歩くことは頭にも身体にも良い筈です.実際,頭の回転が良くなって,研究のアイデアも沸々と涌いてきます(帰ってから冷静に考えると錯覚だったことも多いですが…).DPLは鉄道も好きだけど,今は徒歩が一番好きかな(「スローライフ」なんて言わないでね!).

ところで,先ほど孫引きしたヘンリー・ミラーにありましたように,「私たちが飲み屋や角の八百屋まで歩いていくときでさえ,それが二度と戻って来ないことになるかもしれない旅だ」ということは,DPLは強く認識しています.実際,真面目な話,朝元気に出て行って,不慮の事故で文字通り「帰らぬ人」になる人が毎日一定数おられます.DPLは毎朝,出発間際に「今生の別れ」を覚悟して,愛妻とのある儀式を玄関先で行います(何をしているのかは大体想像できますよね).こうやってブログを書いておりますように,現在までのところ,杞憂に終わっていますが,先のことは誰にもわかりませんね.

今日ご紹介した本
吉行淳之介著「街角の煙草屋までの旅」(講談社文庫,1981年)


---再掲ここまで---

このブログも最初の頃はやたらとゴチャゴチャ書いています。今はあっさりとしかブログが書けなくなったなあ~。まあ、あまり長く書くと誰も読んでくれないけど(この過去記事も最初は誰にも読まれた形跡がなかったんだ)。
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いまも愛妻に心のトキメキを覚えるハート庵主人・プリティラヴ博士(DPL)が,皆さまに「愛」の御福分けをいたします.愛妻家および愛妻家ファン必読!過去記事の一覧はこっちだよ.
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DPLのプロフィール:愛妻家,甘党男子,散歩家,鉄道青年,活字中毒者,長髪ピンク野郎,英国かぶれ,農学博士,自称経済学者,大学教授(もと経済学部長),馬術部長(残念ながら乗馬経験はありませんが,象にはインドで乗りました)など.主に大阪周辺をチョロチョロしています.

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